((財)祇園祭山鉾連合会
理事長 深見 茂 )
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それが良い習わしなのか、悪しきしきたりなのかはともかく、京都の町衆の家では、いわゆる「褻」と「晴れ」、つまり「ふだん」と「おもて」、ですから日常の生活の場と、
客を迎えたり祭りを祝ったりする場とを厳格に区分して生活しています。 私自身も、世の中にいわゆるリビングルーム的生活様式が存在することを初めて知ったのは、国民学校(今の小学校)三,四年生の頃、東京から越してきた同級生のうちへ遊びに行った折りでした。
「お客さんにはどんなご馳走が出てるのやろ」と想像しながら家の者たちは台所の片隅でニシンやボウダラを噛っていたのです。
さて、祇園祭の宵山も、そうした「晴れ」の場面の最大のものの一つなのです。
私たちも風呂に入って身をきよめ、よく糊のきいた浴衣を着せてもらって、ワクワクと待機します。
とりわけ楽しいこんな「晴れ」の宵であってみれば、道行く祭り見物のかたがたも、せめて紅殻格子の間から共に楽しんで頂くに、どうしてやぶさかであるべきでしょう。
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(1993年婦人画報社 京都祇園祭のすべてより転載)
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